現行レギュレーションの最終シーズンが幕を開ける。
今シーズンは、フロア規則やタイヤの変更があり、性能を削がれることになる。
それでも、これらのマシンは、過去最速を作り出した現行レギュレーションの、究極の最終形態であることは間違いないだろう。
その開発成果に迫る。(前編)
今シーズンの主なレギュレーション変更点
フロアの後端

出典:https://www.formula1.com/
上記の画像を見ていただくとわかる通り、昨年は、赤部までフロアが広がっていたが、今年は青部までに制限された。
また、複雑なパーツや穴をあけることも禁止されている。
ディフューザー

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一番中心に近い2枚のスプリッターの上下の長さが短く制限された。
トークン制度の導入
今年から導入されたマシンの開発制限。
簡単に言うと、マシンの開発できる領域が「2トークン」=「2エリア」「2パーツ」のみ許されることになった(一部対象外のエリア除く)。
まず開発トークンをどこに使うか
フロアの新レギュレーションによって、リアのダウンフォースが特に失われた。
これを補うようにトークンを配分しなければならない。
リアのダウンフォースが失われたのだから、どのマシンもリアにトークンを使ってくるだろうか。
否、そうはならないのがF1の面白さであろう。
リアに使用
『フェラーリ』と『アルピーヌ』がリアにトークンを配分したことを明言した。
リアの大物パーツなどの形を整え、空力的に自由な空間を広げようという算段か。
特に『アルピーヌ』は、その痕跡が、よく見て取れる。
ラジエーターやギアボックスの位置を高くし、フロア上面の気流の自由度を上げる方向で開発してきたようだ。
その分、エンジンカウルが太くなってしまっている。

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フロントに使用
逆に、『アルファタウリ』や『アルファロメオ』はフロント部にトークンを使ったという。
初めに空気が当たるフロントの気流を改善し、リアにつなげようという考えか。
また、両チームとも、ノーズを少しだが、細くした。
サイドポンツーンやリアへの気流の量がかなり増えるため、大きな変化といえよう。
どのくらいの効果なのかは、これらのチームの成績を見ればわかるだろう。
両チームとも、プレシーズンテストやシーズンインをしても、昨年より相対的なパフォーマンスが上がっている。
トークンを使わない
『ハース』と『ウィリアムズ』がトークンを使用しない決断をした。
前者は開発コストの節約、後者は「空力と軽量化に集中」が理由であるとしている。
どちらも、成績の低迷が続くチームのため、既にレギュレーションが変わる、来シーズンに注力し始めているようだ。

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そして、『メルセデス』や『レッドブル』は使用した箇所を秘密にしている。
トップチームならではのやり方だろうか。
「いずれわかる」と『メルセデス』はコメントしている。
ちなみに『マクラーレン』は、パワーユニットをメルセデス製にスイッチするため、モノコックに使用している。
効能を削がれたフロア、これをどう対処するか
フロアの規則変更は、ただ面積を小さくしただけではない。
具体的に、2つの問題を生み出した。
【1つ目】
1つ目は、リアタイヤへ当たる気流の制御だ。
タイヤは回転する大きな構造物で、気流を大きく乱す。
この乱流が周りのエアロパーツの効果を削いでしまうのだ。
例年は、リアタイヤの前でフロアにエアロパーツを置いて対処してきた。
今年はリアタイヤ前のフロア自体が半分に減ってしまったので、例年のようにはいかないだろう。
【2つ目】
2つ目は、フロア下に乱流が入ってしまうことだ。
ディフューザーの効果を最大限発揮するために、フロア下に乱流を作らないことが大切になってくる。
今年、問題になるのは、フロア外側(マシン左右)から入り込む乱流だ。
いつもならフロア端に穴をあけて、”エアカーテン”を作り進入をブロックしていたが、今年は、穴が禁止されてしまっているのだ。

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各マシンを見てみると、いずれもフロア端の処理が似通っている。
フロアの真ん中あたりとリアタイヤ前で、それぞれ、外に流す衝立を立てているのが基本の形だ。
『アストンマーチン』のように、フロア真ん中の衝立を数列立てて、しっかり外に流そうとするマシンがあれば、『メルセデス』や『マクラーレン』のように衝立が無いチームもある。

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レースを迎えるごとにアップデートがみられるが、「外に流す」ということが主目的だろう。
リアタイヤ内側に流すわけではなく、リアタイヤに気流を当てない、フロア横にエアカーテンを作りたい、との考えのようだ。
そして、採用チームが増える、いわゆる”Z字型フロア”。
プレシーズンテストでは、『レッドブル』と『アストンマーチン』のみ採用だったが、グランプリごとに採用チームが増えてきた。

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”Z字型フロア”は、実質的に、フロアより外側に空力パーツを置けるようにした案である。
これにより、むしろ、昨年よりもエアカーテンを作り出すことが簡単になったかもしれない。
後編へつづく
前編は如何だっただろうか。
導入されたマシン開発制限と、フロアの大規制、例年以上に開発が難しいシーズン。
トピックはまだまだ終わらない。