現行レギュレーションの最終シーズンが幕を開ける。
今シーズンはフロア規則やタイヤの変更があり、性能を削がれることになる。
それでも、これらのマシンは、過去最速を作り出した現行レギュレーションの、究極の最終形態であることは間違いないだろう。
その開発成果に迫る。(後編)
今年のエンジンカウルは太く?それとも細く?
2020シーズンまでは、どのチームもエンジンカウルをできるだけ絞って細くするのがトレンドだった。
しかし、2021シーズン、あえて車体を太くするチームが多くみられた。
その筆頭は前述の通り、『アルピーヌ』だ。
大胆にインダクションボックスを大きくしてきた。

出典:https://www.formula1.com/
フロア上面を自由に使うためにラジエーターなどを上に移動した結果、この形になったと言われている。
リアウイングへの気流が悪くなってでも、フロア上の気流を重視したようだ。
メルセデスエンジンを積むチームも太くなった。
エンジンカウルを開けていた時の写真で明らかになったが、メルセデスエンジンのインテークチャンバーが昨年より大きくなっている。
それにより、『メルセデス』『アストンマーチン』のカウルには”こぶ”ができていることが見て取れる。

出典:https://www.as-web.jp/
気流が流れるうえで、この“こぶ”が邪魔な存在になるのは明らかだ。
超高速で走るF1にとっては、もはや塗装表面のざらつきさえ影響を及ぼす。
それほどのメリットが、吸気系の変更にあるのだろうか?
その真価やいかに。
レーキ角はどうするのが正解?
昨年、フロアのレギュレーション変更が話題になったころから、ハイレーキ、ローレーキどちらかのマシンが有利になると言われてきた。
昨年中に、確たる答えは出ていなかった。が、開発部門は分かっていたようだった。
プレシーズンテストから、多くのチームが”なんとなく”ハイレーキ”だったように見えた。

出典:https://www.racefans.net/
開幕を迎えて、答えがはっきりした。
ローレーキの『メルセデス』『アストンマーチン』が”なんとなく”苦しんでいる様子だ。
ローレーキは、フロア下のグランドエフェクト(地面効果)を使うコンセプトだ。
地面とフロアの狭い間に速い気流が流れることで、ダウンフォースを生み出している。
このグランドエフェクトが、「フロア横からの乱流」と「弱化されたディフューザー」の影響を大きく受けたようだ。
乱流がフロア下を荒らす、ディフューザーが気流を速くできない、といった具合だ。
やはり「『メルセデス』潰しのレギュレーション変更」という噂は本当だったのだろうか。
その他、気になるパーツ
〈 メルセデスエンジン VS ホンダエンジン 〉
見ている限り、いまだにメルセデスエンジンの天下が続いているようだ。
『マクラーレン』を基準にとると、『メルセデス』のマシンはDRSを使うとぐんぐん追いつくが、ホンダエンジンはそれほど追いつけていない。
シーズン中の進化に期待か。
〈 アルファタウリの奇妙なノーズ 〉
プレシーズンテスト2日目の午後、アルファタウリのマシンに奇妙なノーズがついていた。
権利の関係上、下記のイラストになってしまうが、3つのこぶとノーズは境界線がなく一体成型だった。

出典:執筆者作
おそらくただのセンサーであるが、非常に興味深い形だ。
〈 狭いフロントウイングステーが正解? 〉

出典:https://www.formula1.com/
今年から、『フェラーリ』がノーズから伸びるウイングステーが狭いコンセプトを採用した。
ノーズ先端の形状に差異はあるがメルセデス型と同じコンセプトで、ノーズ近辺の気流をフロア下ではなくサイドポンツーンに配分する設計だ。
上位を争うチームでは『レッドブル』『アルファタウリ』以外がすべてこのコンセプトを採っている。
気流、フロア下に流すかサイドに流すか、正解は如何に。
〈 メルセデスのギアボックスは大丈夫? 〉
プレシーズンテストでトラブルが発生した『メルセデス』のギアボックスだが、第2戦でも『アストンマーチン』にトラブルが発生した。
ギリギリを攻めた設計をしているF1には、ツキモノだが、連発するとさすがに心配になる。
決着はノントラブルのガチンコ勝負でつくことを願いたい。
止まらない改良
1ヶ月ほど前から書き始めた本記事だが、初期構想から何度も書き換えがあった。
それほどF1の開発スピードは速い。
現在苦しんでいる『メルセデス』や『アルピーヌ』も、このままでは終わらないはずだ。
まだまだ2戦を終えたばかり。
シーズンの行方が楽しみだ。
そしてレギュレーションが変わる来シーズンも楽しみである。