音楽の世界に登場する「メルセデス・ベンツ」の世界

『男の子』という生き物は自分の手に入れた獲物を自慢したがる。

幼稚園児はイオンやトイザらスで買ってもらったおもちゃを自慢するし、難関大学に合格すれば同窓会で自分よりも学歴が低い同級生にマウントを取りたくなる。

美人な彼女を手に入れたら、幌全開の左ハンドルの助手席に乗せて、秋葉原のオタクの目の前でエンジン音を響かせたくなる。

洗濯機外置きの市営住宅に住んでいる、口だけは偉そうな先輩の目の前では、ホワイトビジネスで手に入れた札束を見せびらかしたくなる。

ストリートで育った私も例外ではなかった。貧乏な生活から這い上がって手に入れた中古のベンツはいくら型落ちでも成功の象徴そのものだった。

自分を馬鹿にした人間は、全員マスコットエンブレムがボンネットの上で輝くメルセデス・ベンツに乗っていない、その事実だけでこの世界の王様になれた。

一生負け組だと思っていた人生に、少しくらいは光と夢を見てもいいかもしれないと思った瞬間だった。

 どうやらそのようなことを思うのは私だけではないみたいだ。ヒップホップアーティストのリリックにはよく「メルセデス・ベンツ」というこの上なき美しいブランド名が出てくる。

韻の踏みやすさ、言葉の美しさ、成功の象徴として「メルセデス・ベンツ」は多く出てくる。

今回は歌詞に「メルセデス・ベンツ」が出てくる楽曲5つを紹介したいと思います。

ヒップホップのみならず、成功の象徴のみならず様々な情景描写として出てくる「メルセデス・ベンツ」を私の考察も交えてご紹介します。

1.G-Unit「Stunt 101」

とても分かりやすいヒップホップから。『USヒップホップ』での王様であり頂点である50centが結成したユニット「G-Unit」での楽曲です。

MVでは、50cent率いるG-Unitのメンバーたちが札束やスニーカー、BMWに履かせたメッキメキなジオバンナのホイールを自慢する姿が映っています。

ニコラス・ケイジ主演の映画「60セカンズ(2000)」にインスパイアされて作られたようです。

60セカンズの冒頭シーン(ディーラーからポルシェを盗むシーン)のオマージュが入っており映画好きが見ても面白い内容となっています。

このMVの発表は2003年。リリックの中でも、

<Seven series BM>

< six series Benz>

<Twenty-four inches, Giovanni rims R1 one wheel>

などと出てきます。

メルセデス・ベンツの6シリーズというのは、「W220の600モデル」を指しているのでしょうか…詳しい方がいましたらTwitterなどでコメントください!

動画はこちらでは公開できない仕様になっていますので、以下の「YouTubeで見る」から是非。

2.Eagles「HOTEL California」

洋楽好きギタリストが一度はギターソロに恋をする「ホテル・カルフォルニア」。

歌詞の解釈の困難さで有名なこの曲にも「メルセデス・ベンツ」は出てきます。

1977年に発表されたこの楽曲は、実際には存在しない「ホテル・カルフォルニア」を舞台にしています。

暗喩の多い考えさせられるワードがたくさん出てくるのが特徴的です。今なお多くの人に愛され、そして歌詞の意味深さから様々な解釈が未だに生まれる名曲です。

歌詞の中にはこのように「メルセデス・ベンツ」は登場します。

 <Her mind is Tiffany-twisted>

 <She got the Mercedes-Bends>

和訳すると……様々な解釈が生まれます。

最初の「彼女はティファニーに夢中」はなんとなくわかりますが……

「She got the Mercedes-Bends」には様々な訳し方や解釈が生まれます。

まずこちらのワード、よく見ると車のブランドである「メルセデス・ベンツ」とは表記が異なっています。

歌詞では「Mercedes-Bends」となっていますが、実在する車のブランド名は「Mercedes-Benz」です。よくみると最後のZがDSに変わっています。

これは歌詞の誤植などではなくあえてこの表記にしているとのことです。「Bend」には「曲がる」という意味も込められており、今もなおインターネット上でも議論が繰り広げられています。

また、こちらの歌詞には「1969年以降」というキーワードが登場します。楽曲の発表が1977年なので1969年~1977年が曲中の舞台と考えられます。

この曲は成功の象徴である「メルセデス・ベンツ」という解釈も出来るので当時の最新型なのでしょうか…個人的には当時の縦目のSLクラス(W113)を連想しました。

オープンカーは成功者の象徴ですからね…。ホテル・カルフォルニアには様々な歌詞の解釈が生まれます。興味あるようでしたら調べてみるのも面白いかもしれません。

こちらも動画は以下の画面の「YouTubeで見る」からどうぞ。

3.RYKEYDADDYDIRTY「MEMORY MY HEART」

 八王子出身のリアルなリリックを書くラッパー、RYKEY DADDY DIRTYの最新アルバムから一曲選びました。RYKEY DADDY DIRTY(以下リッキー)の楽曲は、自身の壮絶な過去を描いたリリックと、90年代のUSヒップホップやR&Bをリスペクトしたビートが特徴的です。

「MEMORY MY HEART」には「セルシオにベンツ、20前期とS」という形でメルセデス・ベンツが出てきます。医療センターや体育館が出てくることから、10代の頃の壮絶な過去を回想していると推測できるリリック。

同時に出てくるセルシオの世代が20前期なので、S‐Classの方は「W140」や「W220」世代が推測されそうです。

リッキー自身が1987年出身。「売人の真似事をした15、16」というリリックから2002年~2004年と推測することもできます。

当時の最新型がW220、一世代ならW140と推測できるでしょう。どちらも20前期と合わせてヒップホップな情景描写に似合うS-Classですね。

総評

今回は3曲をピックアップして紹介しました。いかがだったでしょうか。「メルセデス・ベンツ」が登場する楽曲はこれらのみではありません。

他にも

・「はっぴいえんど」

・「型落ちGOLD BENZ」SHO

・「Mercedes-Benz」ジャニス・ジョプリン

・「Mercedes」JAY1

などにもメルセデス・ベンツが登場します。視点を変え、歌詞を通じてアーティストが歌った「メルセデス・ベンツ」の世界に触れてみてはいかがでしょうか?

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

Editor

2000年生まれ。元愛車はアズライトブルーの初代CLK。コメダとラーメン山岡家が大好き