TOYOTA GAZOO Racing（TGR）は12月5日、新型車『GR GT』と『GR GT3』を発表し、現在開発中のプロトタイプ車両を世界初公開しました。これら2台は「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を深化させるTGRのフラッグシップモデルとして開発が進められており、2027年頃の発売を目指しています。
公道を走るレーシングカー「GR GT」
『GR GT』は、“公道を走るレーシングカー”をコンセプトに開発されたTOYOTA GAZOO Racingのフラッグシップスポーツカーです。
かつての『TOYOTA 2000GT』や『Lexus LFA』に続くフラッグシップとして位置づけられており、「トヨタの式年遷宮」として“クルマづくりの秘伝のタレ”を次代に伝承することも開発の狙いの一つとされています。
開発は、マスタードライバーであるモリゾウ（豊田 章男 代表取締役会長）を中心に、プロドライバーやジェントルマンドライバー、社内評価ドライバー、エンジニアがワンチームとなって進められてきました。クルマを操るドライバーのニーズを具体化する“ドライバーファースト”の追求が最大の特徴です。
『GR GT』は、圧倒的なパフォーマンスを実現するために、低重心、軽量・高剛性、空力性能の追求という3つのキー要素にこだわっています。
パワートレーンには、新開発の4L V8ツインターボエンジンと1モーターのハイブリッドシステムを搭載。トヨタ車として初めて市販車に搭載されるこのV8ツインターボエンジンは、「徹底的に小さく、軽く」を設計思想とし、低全高、低重心パッケージの実現に貢献しています。システム最高出力は650ps以上、最大トルクは850Nm以上（開発目標値）を発揮し、V8ツインターボならではのレーシングサウンドも追求されています。駆動方式には限界領域までの扱いやすさを考慮し、FRを採用。
エンジンが生み出す動力はCFRP製トルクチューブを介して、新開発の8速ATと機械式LSDを一体化したリヤトランスアクスルへ伝達されます。この配置により、前後重量配分は前45：後55という理想的なバランスを実現しています。
軽量・高剛性を実現するため、トヨタとして初めてオールアルミニウム骨格を採用。ボディパネルにはカーボンや樹脂などの素材も適材適所に使用。サスペンションは前後ともにアルミ鍛造アームを使用した新設計のローマウントダブルウィッシュボーン式を採用し、日常使いから限界域までリニアな応答性と高いコントロール性を追求しています。
徹底的な低重心化を目指し、全高とドライバーの位置を極限まで下げて開発がスタート。ドライサンプ方式のエンジンやリヤトランスアクスル、その他ユニット類の最適配置により、重量物の重心位置が大幅に引き下げられ、ドライバーとクルマの重心をほぼ同じ位置にするという理想的なドライビングポジションが追求。
エクステリアデザインでは、空力性能の理想像を定めてからデザイン検討を進めるという「逆転の手法」が取られました。通常の開発プロセスとは異なり、FIA世界耐久選手権（WEC）の参戦車両を手掛けた空力エンジニアが参画し、「空力ファースト」のコンセプトのもと、空力・冷却性能を追求したデザインが実現されています。
勝ちたい人のためのレーシングカー「GR GT3」
『GR GT3』は、『GR GT』をベースとしつつ、レースで勝ちたいと願うすべてのカスタマーに向けて提供されるFIA GT3規格のレーシングカーです。『GR GT』で追求された低重心、軽量・高剛性、空力性能の3つのキー要素は、このレーシングカーにも引き継がれています。GT3カテゴリーはプロドライバーだけでなくジェントルマンドライバーもステアリングを握るため、GR GTと同様にドライバーファーストが重要な価値とされています。
『GR GT3』は「勝ちたい人に選ばれる、誰が乗っても乗りやすいクルマ」を目指して開発されており、車両の戦闘力向上に加え、カスタマーが心の底からモータースポーツを楽しめるよう、最適なカスタマーサポート体制の整備も進められています。また『GR GT3』の骨格部品の多くは『GR GT』と共用できるように開発されています。
『GR GT』と『GR GT3』は他のGR車と同様に「走る・壊す・直す」を繰り返して、あらゆるドライバーの期待を裏切らないクルマを目指して開発が進められており、詳細については”準備ができ次第、随時情報を公開していく”としています。
