ポルシェのラインナップにおいて、ミッドシップレイアウトによる卓越したハンドリングと、比較的コンパクトなボディサイズで人気を博すケイマン。その魅力に取り憑かれ、オーナー同士の熱い絆を育むコミュニティ「Caymania」を主宰するのが、”ケイマニア”こと小林さんだ。GTアジアへの参戦経験も持ち、現在はタイムアタックの世界で「ケイマン最速」の称号を手にしている彼に、ケイマンという車への深い愛情と魅力、そのコミュニティについてお話を伺いました。
「セカンドカーの予定だったんです」“楽しさ”を求めて辿り着いたケイマンという選択肢

——上京をきっかけにやむなく「マイカー所有」を諦め、仕事に打ち込んでいたという小林さん。公私共に多忙だった時期から、いつしか車を所有できるようになり、さまざまな車を乗り継いできた彼が、どのタイミングで・なぜ「人生の相棒」とまで言えるケイマンという車に巡り合ったのかを教えていただきました。
元々車が大好きだったのですが、上京をしてきてからは”車を所有すること”を諦めていました。ずっと仕事に励んでいて。そこから少し車を楽しむ余裕が出てきたかな…というところで中古のベンツを購入しました。少しステップアップしてベントレー・コンチネンタルGTにも乗っていましたね。ただ、故障や維持費の面で、なかなか「楽しむ」というところまでいかなくて。そこで、”セカンドカー”として楽しい車を探し始めました。フェラーリの360モデナも考えたんですが、日常使いを考えると難しいなと。それで「フェラーリを買うはずだったお金で、もっとスポーティな体験をしたい!」と思い、ポルシェに目をつけたんです。

——ポルシェといえども、新旧問わず多くのモデルがある訳ですが、なぜケイマンを選んだのでしょうか?
昔からモータースポーツとか見てる中で、勝手にですよ?特に乗ったことはなかったんですけど、リアミッドシップの車がいいな〜と思ったんです。911も検討はしていたけど、当時でも高いうえに「あのリアにエンジン積んで4人乗りに無理くりして、本当に運動性能としていいのはケイマンとかなんじゃないの?」と(笑)
そんなに「馬力馬力」という趣味でもなかったので、ケイマンでサーキット遊びをしようかなという感じで選びましたね。それが7年前くらいかな。

——エンジンパワーよりも”走りそのもの”を楽しみたいという価値観から、自然とケイマンに惹かれていったという小林さん。最初のケイマンを手に入れてから、草レースやサーキット走行にのめり込み、そこで仲間ができたことが大きな転機となったといいます。
ケイマンを買ってから、草レースに出たりサーキットを走ったりするうちに、自然と仲間が増えていきました。車を通じて人と繋がるという経験があまりなかったので、すごく新鮮でしたね。「走る」という共通の目的を持つ仲間と、タイムやセッティングについて語り合うのは本当に楽しかったです。
クラッシュを乗り越え、2台目のケイマンへ

「これは半ば余談なので記事にしなくてもいいんですけど…」という形でお話していただいたことではありますが、小林さんの”ケイマン愛”を体現しているエピソードをお話しいただいたので記しておきます。
いろいろ楽しんでいるうちに、最初に買ったケイマンが雨でクラッシュしてしまったんですよ。幸い軽いものだったからよかったけども、直している間は乗れませんってなってしまって。ちょうど走りに行きたいイベントとかあったのに残念だな…と思っていた時に「まだ持っていたベントレーを手放してもう一台、街乗りもケイマンにしよう」と決めて、2台目のケイマンを買うことにしました。実は2台持ってるんですよ(笑)

何か普段乗る車を…と選択肢を考える際に、同じ車を2台所有しようと思うのは「マニア」を超えて「愛」なのでは?と思った筆者でした。
「ケイマンでレースに出る」ことが自然だった

——国際レース「GTワールドチャレンジ」に参戦した時も、迷わず選んだのはケイマン。「ポルシェ屋×ケイマン好きの自分」という組み合わせがしっくりきたといいます。
横浜の「チェックショップ」さんと一緒に国際レースに出場する際も、やはりケイマンを選びました。今ではCaymaniaのメンバーと耐久レースに出たり、ケイマン乗りのユーザーさんのマシンのセッティングを見たりと、僕のサーキット走行の99%以上はケイマンですね(笑)。

——GTワールドチャレンジでは、日本とトップドライバーと互角かそれ以上の活躍を見せ、予選でポールポジションを何度も獲得。現在ではレース活動を一度お休みされ、タイムアタックの世界にのめり込んでいると。
筑波サーキットの「Attack筑波」で”ケイマン最速”を目指したり、若いオーナーさんたちと一緒に楽しんでいます。仕事ももちろん大事ですが、車遊びの比重はかなり大きいですね。
“Caymania”立ち上げのきっかけは「純粋な好奇心」と「行動力」

——小林さんのケイマン好きが高じて立ち上げられた”Caymania”ですが、最近では若いオーナーの参加も増え、今や大きなコミュニティへと成長しています。もうこの記事と”Caymania”というネーミングから勘づいている人も多いかと思いますが、愚問とも言えるその名前の由来も聞いてみました(笑)
Q.「Caymania」という名前は、ケイマンマニア…からきているということで…認識としてOKですか?(笑)
A.そうですね、その通りです…ケイマン+マニアで「ケイマニア」だってことは一目瞭然ですよね(笑)いろんなイベントに出たりとか雑誌の取材だったりとかで、ここに至る経緯を説明した上で「”ケイマンマニア”です!!」とかって言っていたら、この概念が生まれたって感じです。

——インタビューと同日に開催されていた「Caymania Day mini Vol.1」にも、多くのケイマニアが集まっていましたが、その中に多かったのが、前述にもある通り若者。20代の参加者も多かったのです。
最近は20代のオーナーさんも本当に多いです。状態の良い中古車なら400万円くらいから手に入りますし、ブレーキパッド交換だけでもかなりの戦闘力を発揮します。国産スポーツカーをフルチューンするよりも、結果的にランニングコストを抑えられる点が評価されているのかもしれません。




——年齢層も幅広く、さまざまな年代のいわば「新旧ポルシェオーナー」が交流するコミュニティとなっているCaymaniaが「はじまるきっかけ」とは、何だったのでしょうか。
そもそもこのようなイベント・集まりを開催するようになったのも、あまり日本でケイマンのコミュニティが盛んではなくて、集まりなどもあまりなかったんです。「せっかくならケイマンだけが集まるイベントをやってみたいな」と思っても、参加できるところが少ない。で、もともとイベントを仕切るような人間ではなかったんですが『なかったら自分でやってみよう』と始めました。千葉・茂原サーキットで開催した時には気がついたら50台も集まっていて、関東中のケイマンが来たんじゃないか!?と僕自身が一番びっくりしました(笑)

Caymaniaのイベントでは、自身もケイマンに乗る映像クリエイター集団「Focus Visuals」のコフ氏による撮影会も。このようなコンテンツの充実も、コミュニティとして人気のある理由です。あくまで趣味の延長として始めたものが、多くの共感を呼び、今では多くのオーナーたちが集うものとなっています。
【Caymania Dayの様子は以下の記事で】

小林さんが思う”ポルシェ”・”ケイマン”の魅力とは

最後に「最強で最速のケイマンマニア」である小林さんが思う、”ポルシェ”・”ケイマン”の魅力をお聞きしました。
ケイマンやボクスターの初期型、いわゆる“986”世代のモデルは本当に壊れにくくて、サーキット走行にもガンガン使える優秀なクルマです。最近の“718”シリーズになると、ノーマルのままでも十分速くて、少し手を加えるだけで驚くほどパフォーマンスが引き出せる。
そういう意味では、どの世代にもそれぞれの魅力やキャラクターがきちんとあって、しかも「悪いモデルがない」というのがポルシェの素晴らしさだと思います。
Caymaniaではそれをユーザー同士で共有しながら、それぞれのスタイルでポルシェライフを楽しめる場を作っています。車種やグレードの垣根を越えて、「それ、いいね」「楽しいよね」と言い合える、そんな仲間の輪がどんどん広がっているのを感じます。
個人としても、ケイマンの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいですし、今後もオーナー同士のつながりを広げながら、ケイマンの魅力を発信し続けていきたいですね。個人的にはですが、本当に”全部いいと思っている”ので、ぜひ買って!買ってください。買って一緒に遊びましょう

——小林さんの語る「ケイマン愛」は、単なる車好きの枠を超えたもののように感じられました。”なければ自分で作る”というスタンスで立ち上げた「Caymania」は、今では世代や経験を超えてつながる場となり、若いオーナーも巻き込みながら成長を続けています。
それはきっと、小林さんの「純粋に楽しむ」姿勢があってのこと。想像以上・期待以上の『楽しさ』を与えてくれるケイマンの魅力を、今後も発信しつづけ、体現しつづけることでしょう。