こちらの記事は、以前のCarBoon(ここでは旧CarBoonと言わせてください)で、2021年に執筆した記事です。旧CarBoonではこのような記事も書いていたよ~という事を知っていただきたく、リバイバル記事としてアップします。
さて、今回は フィアット・バルケッタ と フィアット・パンダ を試乗させていただきました。素人ながら、今までのクルマ体験の中で一番と言っていい程に刺激をもらった2台を、当時の言葉でお伝えしています。
あぁ…今の僕でもう一度乗ると、その時感じるものも違うのだろうか…
皆さんはクルマに何を求めますか?燃費?速さ?乗り心地?デザイン?メーカーのブランド?
さまざまある要素の中で、今回気づかされた事は“車に触れる・手にする事で得られる『豊かさ』“です。
手に入れる事で満たされる、眺めているだけで満たされる、走らせる事で満たされるその先にある価値観を、フィアット バルケッタ と フィアット パンダ からは感じ取る事ができます。
今回は上記の2車種を実際に試乗。自分なりに感じた事を、感じたままにお伝えします。
フィアット バルケッタ&パンダとは…という説明は、他の媒体などで色々な自動車評論家様・ライター様が執筆されているので、そちらをご覧下さい!
早速、試乗した感想を思うままに述べていきます。まずはバルケッタから!
フィアット バルケッタ “自然とのランデブー”
普段から「ハイパワーFF」と言われる車に乗っているのもあり、小型オープンスポーツには憧れを抱いていました。
そのジャンルでは、ロードスターやMR-Sなど、国産でも選択肢がない訳ではありませんが、狙い撃ちでバルケッタを選びたくなる唯一無二の魅力が、そこにはありました。
エクステリアは、その車名からして「小舟」の様な可愛らしいフォルム。デリバリーから25年経った今でも色褪せないデザインで、僕が描いていたイタリア車が体現されています。
ボタンを押すとドアノブが飛び出す作りもスーパーカーチックで、乗る前からワクワクさせされる作り。
現代のクルマにはない、ドライバーポジションから近いフロントガラスや、ドアとシートまでの距離など、さまざまな部分がコンパクトにまとめられているデザインも、”オープンカー”のいいところを存分に演出する為になされていると感じます。
車内はすごくシンプル。メーターやインパネ周りも、運転に必要最低限の装備のみで、コックピット感がある運転席となっています。
個人的には 『トヨタ スープラ(A80)』や『マツダ RX-7(FD3S)』、『日産 スカイラインGT-R(BNR32)』のような、”コックピット感”のあるデザインの運転席が凄く好きで、少年心をくすぐられます。
実際に車を走らせてみると、見た目の可愛らしさとは裏腹に「良い意味で」裏切られる、完全なるスポーツカーでビックリ。
1.7Lの直列4気筒エンジンをフロントに横置きでマウントし、クロスミッションとなっている為に、街中でも気持ち良く運転が出来ます。
1989年に登場した「マツダ ユーノスロードスター」の影響を強く受け開発されたとも言われているバルケッタですが、ベンチマークがロードスターだとすると、同等またはそれ以上のフィーリングを感じました。
スポーツカーとしての基礎能力の高さは文句なし。ただ、試乗した際に思った点が1つ。
「この車、『小型オープンスポーツ』というよりも『GTカー(グランドツーリングカー)』っぽく乗る方が楽しくないか!」
試乗させて頂いた際にも、アクセルを踏み込んで、コーナーをそこそこのスピードで駆け抜けたのは最初の5分程度。
その後は自然と、屋根を開け風を感じ、窓際に腕を掛け、夕陽に照らされながら、2500回転シフトでゆったりと流していました。
フィアット パンダ “国民性の体現”
このパンダは、先ほど試乗したバルケッタの約20年前の車で、パワステやパワーウィンドウなどの装備は一切なし。
イタリアの国民車として長く愛されてきた フィアット 500(チンクエチェント)の後継車として1980年に登場したこの パンダ ですが、40年前から今の時代まで受け継がれているイタリア車の魅力が凝縮されていました。
一見、軽自動車と見間違える程の小ささであるエクステリアは、全長と横幅が軽自動車の規格と数ミリしか変わらず、黄色ナンバーが付いていてもおかしくないサイズ感です。
直線を多用した特徴的なボディデザインは、開発や製造に関わる徹底的にコストをカットする為に採用。
それもあり、チンクエチェントと同様「国民車」として、手の届きやすい価格で、多くの人に愛される一台となりました。それでいて、細部までデザインや設計面での、ユーザーに対する配慮がある上、急ぐことに注力されていないパンダは、まるでイタリア人の国民性を示した車ではないでしょうか。
以前、テリー伊藤さんがパンダをインプレッションする記事を拝見した際に「シンプルで実用的なのに上品」という評価をしていた事を覚えています。
今回試乗するまでは「上品さと実用性は相反するだろ…」と思っていたのですが、いざ目の前にすると、名匠 ジウジアーロが手掛けたというだけでも、その上品さは…僕には分かりませんでした(笑)
どちらかというと、バルケッタと同様に小さくて可愛くて実用性のある「ピクニックカー」の様なイメージ。その部分は、現行のパンダやチンクもこの世代の車達を踏襲していて、車をライフスタイルに合わせ「ファッションの一部」としても考えるイタリア車の側面を感じました。
手動で開ける回転式の窓に、今では当たり前のナビやパワステもない車だからこそ、運転している自分に酔いしれてしまう感覚は、まるで自分がファッション誌の1ページに刻まれている、と錯覚してしまうほど情景をオシャレにしてしまいます。
細部まで設計に配慮があり、飽きないデザインを持つことや、急ぐことに注力されていないパンダは、まるでイタリア人の国民性を示した車である印象を強く受けました。
さて、実際に運転してみての感想を。
一言で表そうと思ったのですが、それよりも「運転中ずっとニヤニヤしてしまっていた」という事が全てだと思います。
重たいハンドル、手で回して開ける窓、フカフカのソファみたいなシート、無骨なボタン類、エンジンパワーがある訳でもなく、決して速くないし、交差点では凄いロールする…だけれど楽しい!!!
エンジンパワーがある訳ではないと書きましたが、普通に街乗りをする分には十二分。トルクバントが広く、加速の際もギア選びにあまり悩む必要はなさそうです。
初代チンクエチェントからこのパンダ、そして現行のチンクエチェントまで同じ精神が受け継がれていると思うと、現行のフィアット500にも乗ってみたくなります。
また、今回はお貸しいただいた近辺での試乗でしたが、実際に自分自身が慣れ親しんでいる道とでは、感じるものも違ってくると思うので、是非今度は自分のテリトリーにて乗ってみたいなと強く感じました。
【総評】2台ともいっぺんに増車してもいいですか?
今回試乗させていただいたバルケッタやパンダは、このポイントが楽しい!と具体的に言い表す事が難しく、実際に乗った人でないと分からない楽しさや面白さが、至る所に詰め込まれているなと感じました。
試乗記で「実際に乗ってみたら分かるよ!」というまとめ方はあまり宜しくないのですが、この2台ばかりではそう言わせて下さい。
今の時代にこの2台を選んでいる明確な理由がある人は、冒頭にもある通り”車に触れる・手にする事で得られる『豊かさ』”に気づいている方なのではないでしょうか。
以前、CarBoonの記事で チープシック というテーマで、パンダをピックアップしましたが、実際にパンダやバルケッタに乗る事で、自分の性格やライフスタイル、ファッションまでもが影響を受け、人生がより豊かになるという事の根拠が出来た気がします。
だって、ずっとニヤけていたんですもん。
成人した男が1人ニヤニヤしながらドライブできる車ってそうないです(笑)
現代では少なくなっている「自分の人生の幅を広げてくれる様な車」がなくなってしまう前に、一度は経験してみて下さい。
Special thanks to Carol!