ワタクシ、また欲しい車が増えてしまいました。その車とは『シトロエンAX TRS』。
今まで運転した車と全てが違う感覚でした。これがフランス車の沼なのか??
先日、とあるイベントでオーナー様のご厚意で“AX TRS”に運転させていただく機会がありました。フランス車好きと名乗っておきながら、この時代の80年代から90年代にかけてのフランス車に触れたことは実は1度もなく、今回が初めての経験でした。この時代のフランス車良いですよね、ルノー5やプジョー205GTiもいつか運転してみたいなぁ…。
というわけで、予備知識なしで運転したAXの試乗時間は5分程度でしたが、今まで運転した車の中で「ある意味1番刺激的」だったかもしれません。それぐらい印象的な1台でした。試乗後に中古車サイトをチェックしたのは言うまでもありません。中古車はGTiとGTしかありませんでしたが…。
ではどこが良かったかって?
それはとにかく軽いこと。これは走り出しての第一印象でもあるのですが、とにかくスイスイ軽快。私の愛車のルーテシア2は車重約1000kgで、この車も現代の車と比べるとかなり軽量な方だと思うのですが、このAXという車の重量を当時のカタログで調べたところ、なんと僅か750kg。”ロータス・エリーゼ”や”ホンダ・S660″、”ダイハツ・コペン”などの小型ライトウエイトスポーツカーよりも軽量なのです。こんなに軽い車今どきないですよね。当時のライバル車と比較しても100kg近く軽量です。
そしてこの『軽さ』が、AXという車の面白さ楽しさに繋がっているように思います。時速30km/hでこんなに楽しめる車には初めて乗りました。AXに搭載されているエンジンは、1.4Lで最高出力70馬力程度。いわゆるフツーの実用エンジン、のはずなのに妙にレスポンスが良くて出だしが軽快なのです。これも軽量でシンプルなのが効いているのでしょうか。車自体は全然速くないのに速く感じます。
運転中なぜかずっと笑顔になってしまう。シンプルイズベスト。ベーシックな感じ、これが本物フランス車。
さて、私のつたない試乗記はここで終わりにして、ここからはAXがどんな車なのかご紹介。
シトロエン AX
AXがデビューした1980年代は世界中の自動車メーカーがコンパクトカー市場に参入してきた時代でした。例を挙げると「プジョー・205」や「フィアット・ウーノ/パンダ」「アウトビアンキ・Y10」「日産・マーチ」など、今なおファンが多い人気車種が多数あります。
そんなライバルが大量に存在したこの時代に発表されたAXは、当時のシトロエンのコンパクトカーの”ヴィザ””アクセル””LNA”の3車種を1つの車に統合させたカタチで、これらの後継モデルとして1986年に登場しました。
発売時期は異なりますが、実は先ほど紹介したプジョー205の兄弟車なんです。AXの特徴は空力性能を重視した現代的なシックなデザインにあります。空力特性を示すCD値は”0.31″とスポーツカー並みです。調べてみたところ「日産・フェアレディZ(Z32)」と同じ数値だとか。ちなみに私の愛車ルーテシア2のCD値は0.35でした。
発売当初は3ドアのみのラインナップでしたが、その後5ドア車やスポーツグレードの設定などのアップデートをした結果、販売台数は増加しました。
さて、そんなAXですが日本への輸入が始まったのは本国発売から約3年後の1989年5月。発売当初はスポーティなGTと量販グレードの14TRSの2つのグレード構成でした。また、AXはバブル期のマツダ販売5チャンネル時代にユーノス店でも取り扱いがありました。マツダのディーラーでシトロエンが買えた時代があったなんて今では考えられませんね。
そしてAXで忘れてはならないのがスポーツグレードのホットハッチモデル。AXのスポーツグレードはAX スポール(Sport), AX GT , AX GTIの3つのバリエーションがありましたが、ハイパワー仕様のGTとGTIについては詳しい記事が多数ありますので、ここでは日本語の文献が非常に少ないスポールについて解説いたします。
AXスポール
このAXスポールがGT/GTIと大きく異なっていた点はラリー選手権のホモロゲーションモデルとして生産されたことです。ラリー1300ccクラス(グループA)のカテゴリーに参戦するためにはベースの車両を5000台販売する必要があったのです。搭載されていたエンジンはAXの1.4Lグレードに搭載されているエンジンをベースに排気量を1.3Lに縮小されたもので最高出力は95psを発生しました。
当時のホットハッチの5 GTターボや205GTiに比べるとおとなしいパワーですが、AXスポールの武器はパワーではなく軽量ボディにありました。先ほどAXの車重は750kgと述べましたが、このスポールではなんとたったの715kgしかありません。その軽量化の内容は装備の簡素化はもちろんですが、外装ではなんと右ミラーがありません。これには驚きました。外装での変更点は右ミラーの他にホワイトのホイールと赤いステッカーがわかりやすい差異です。
AXスポールはその後1度小規模改良を行いましたが、1991年に販売終了となりました。日本に正規輸入されることはありませんでした。
その後1998年に販売終了したAXですが、その総販売台数はなんと約250万台。シトロエンでは2CVに次ぐヒット車になり、商業的成功を収めました。その後は現在でもファンの多いサクソに世代交代することになりました。実はそのサクソと兄弟車の106の中身はAXと共通のモノが多かったのは意外と知られていないかもしれませんね。
まとめ
日本ではプジョー205やフィアットパンダのように今でも根強いファンが多くいる車種というわけではありません。そのため現在ではほとんど街中で見かけることがないAXですが、乗ってみるととってもいいクルマでした。いつかGTやGTIにも乗ってみたいものです。