こんにちは、Canalです。
クルマ好きならもちろん、クルマを知らない人でも絶対知っている自動車メーカー「メルセデスベンツ」。「高級車といえば」というようなクルマを20歳の学生の私が乗るには、少し恐れ多くもあるのですが、これなら個人的にアリかなと思ってしまう「メルセデスベンツ」があるのです。それが”初代Aクラス”。
クルマ好きからはいろいろな意味で賛否ありつつも、認知されているこのクルマ。筆者も昔は「なんだこのクルマ、カッコ悪(笑)」と思っていたのですが、今見ると「実に良いな~」と思ってしまうんです。不思議ですよね。これって私だけですかね??発売から長い年月を経て、今になってこれ良いかも、と思ってしまった”初代Aクラス”。その魅力をご紹介します。
初代メルセデスベンツ・Aクラス(W168)
現行モデルで4世代目となる”Aクラス”ですが、その初代モデルがデビューしたのは27年前の1997年のこと。しかし、ここで紹介する”初代Aクラス”は、名前こそ現行モデルにも引き継がれているものの、見た目はもちろんパッケージングも別物。現行モデルに初代の面影は一切ありません。現行モデルと比較するとこんな感じ。
昔のメルセデスベンツを知らない人や、クルマに詳しくない人が見たら同じクルマとは分からないような大胆なモデルチェンジですよね。
さて、そんな1997年に登場した”初代Aクラス”ですが、その特徴は外観からも分かる短い全長と高い車高。今でこそ、トールワゴンのクルマは多く販売されていますが、当時としては斬新なものでした。また、「メルセデスベンツ」が小型車を出したというのもトピックスの一つでした。では、なぜこのような特徴的なディメンションになっているのか、それは衝突安全と将来の電気自動車開発のためでした。昨今の自動車業界でも重要視されているこの2つですが、1997年の段階ではまだまだこれからといった段階。
そんな時代に、この2つを両立させるために、「メルセデスベンツ」は「サンドイッチコンセプト」と呼ばれる構造を生み出しました。名前だけ聞くと意味が分からないこのコンセプトですが、これはフロアを二重構造とし、エンジンを傾けて搭載するというもの。
フロアを二重構造とすることで、床下にEV用バッテリーを搭載できるようになり、将来のEV化を見据えた構造になっているのです。加えて、傾けて搭載したエンジンやトランスミッションが、全面衝突時にそのフロア下に潜り込むことで、短い全長にも関わらず、乗員の安全を確保できるようになります。”初代Aクラス”の独特なスタイルは、この斬新なコンセプトが影響しているのです。
ワンモーションフォルムで背の高いデザインで、普通のクルマとは違う雰囲気が外観からも見て取れますね。明るいボディカラーになると「メルセデスベンツ」というメーカーの持つ厳格な雰囲気がなくなり、可愛らしい感じがして、個人的にとても好きなデザインです。今ってこういうワンモーションで丸いデザインのクルマなくなっちゃいましたよねぇ。
さらに、”初代Aクラス”は短い全長でありながらも、広い室内空間を得ていたことも特徴の一つです。約3.6mという非常に短い全長(現行トゥインゴよりも短い!)でありながらも、5人が快適に乗ることができるスペースと大型スーツケースを2つ載せることができる広いラゲッジスペースを両立。
後部座席は取り外しも可能で、大きな荷物も積める広さを確保していました。モデルライフ途中で追加されたロングボディは更に広い空間の持ち主。おまけに二重フロア構造による、フラットフロアという副産物もありました。秀逸なコンセプトで、スペース効率にも非常に優れたクルマだったのです。
初代Aクラス、その後は??
エポックメイキングなコンセプトによるコンパクトなボディと広い室内、高い安全性を実現した”初代Aクラス”。ここだけ聞くと、コンパクトカーとして素晴らしい設計のクルマで、高く評価されるべきクルマだと思われますが、実際のところはどうだったのでしょうか。その答えは現行の”Aクラス”がサンドイッチコンセプトを採用していないことから、何となく分かるでしょう。
では、その理由はなんだったのでしょうか。それは第一にサンドイッチコンセプトの当初の計画が破綻してしまったことが挙げられます。将来の電気自動車化を見据え、二重フロア構造を採用した”初代Aクラス”ですが、実際のところはインフラ設備の遅れやバッテリー開発の遅れなどが影響し、モデルライフを通じ、床下にバッテリーを搭載することはありませんでした。
それに加えて、とある自動車雑誌が行った「エルクテスト(クルマの安定性を評価するテスト)」にて横転してしまったことで、サンドイッチコンセプトの欠点が暴露されてしまいました。これはカーマニアの間では有名な話ですよね。その結果「メルセデスベンツ」は”初代Aクラス”全車に横滑り防止装置を搭載するなどし、結果的に安全装備を充実させることになったのですが、他車に比べて重心が高く安定感に劣るという欠点が明らかになりました。
さらにさらに、初期モデルでは内装の質感がメルセデスベンツというブランドに見合わないものだったことから、残念ながらユーザーからも評論家からも高い評価を得ることはできませんでした。なんだかいろいろと惜しいクルマなんですよね、”初代Aクラス”って。
新たな時代を切り開いた”初代Aクラス”
安全性や環境など時代の流れとともに生まれてきた様々な社会問題に対処するべく新たな一手としてデビューした初代Aクラス。残念ながら人気車となることはなく、むしろ欠陥車というレッテルを貼られてしまっている感も否めないクルマですが、若者でもカジュアルに乗ることができる「メルセデスベンツ」という点で新しい市場を開拓した”初代Aクラス”の功績は大きなモノだったのではないでしょうか。その心意気を高く評価したく、今回紹介したのです。