R.S.(ルノー・スポール)は、フランスの自動車メーカーであるルノーのモータースポーツ部門の名称で、市販車にもその名前を冠したクルマもある、ルノーの”ハイパフォーマンスブランド”です。
皆さんの記憶の中では『ニュルブルクリンク量産型FF世界最速』を、ホンダ・シビック タイプRと競っていたイメージがあると思います。日本が誇る”タイプR”と張り合えるほどのハイパフォーマンスマシンを、長く作り続けてきたそのルノースポールの名が、今後ブランド名として消滅してしまうのです。
長きにわたりF1をはじめとするモータースポーツに挑戦し、そこで培った技術やノウハウをフィードバックして開発されてきた系譜がここで途絶えてしまうことは、いちルノー・スポールオーナー(当メディア代表)としては残念なことではあります。
そんなルノー・スポール最後となるイベント「R.S. ULTIMATE DAY(アルティメットデイ)in 袖ケ浦フォレストレースウェイ」が、11/25(土)に袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催。このイベントには、長年のルノー・スポールモデルを開発し、R.S.最後のモデルでもある「メガーヌR.S.ウルティム」の開発も担当された、シャシー開発責任者の”フィリップ・メリメ”氏と、開発ドライバーで『ニュルブルクリンク市販FF車最速記録』を何度も塗り替えた”ロラン・ウルゴン”氏が来日し、ルノー・スポールの最後に花を咲かせました。
今回はそんなイベントに、我々CarBoon編集部も参加。3代目のメガーヌR.S.オーナーである代表と、これまた同じルノー・スポールの3代目ルーテシア・R.S.オーナーである、我らがワイパーさくら(角間)と一緒に、最後のイベントを楽しんできました。
イベントレポートとして取材をさせていただくことを、快くお引き受けくださった「ルノー・ジャポン株式会社」様、本当にありがとうございます。
『ルノー愛爆発の2名がいくイベントレポート』、スタートです!
100台を超えるルノー車が集結!
今回のイベントには、総数100台を優に超えるルノー車が集結。往年の名車から、最新型のルノー・スポールまで、さまざまなクルマが参加していました。その中でも、僕ら2名が気になったおクルマを数台ピックアップ!
「ルノー・スポール」を語る上では外してはならない”キーマン” の2人がイベントに!
前述でもあった通り、本国からシャシー開発責任者の”フィリップ・メリメ”氏と、ルノー・スポール開発ドライバーで『シビックと熾烈なFF最速争い』を繰り広げた”ロラン・ウルゴン”氏が参加!
グループ形式のインタビューの中で、一度終結を迎えるルノー・スポールの今までや、主要ラインナップの電気自動車シフトに伴う今後のアルピーヌブランドについてのお話をお聞きしました。
ー現在までに、さまざまな電子制御やシステムなどが存在していますが「”この世代”の”この車種”に”この機能”が付いていればよかった」などの思いはありますか?
最初のR26Rから、ニュルを全て毎回目標にしていた。その時には必ず「新しい記録を刻んでいく」ということを20年間目標にしてきました。毎回記録を出したということで後悔はしていないし『この機能を入れていないから後悔をしているか』ということは全くないです。かえって、メガーヌ4R.S.でいえば、トロフィーRのモデルを作り上げる時には4コントロールを外したくらいなので、毎回自分たちのやりたいことをやり通した気持ちでいたので、チームのコミュニケーションの面でも凄くよかったし、ブランドとしても毎回確立させられていたと感じています。
ーウルゴンさんのタイムアタックの映像などを見ていても、凄く丁寧に運転されている上にタイムをしっかり刻んでいく姿が印象的なのですが、そのドライビングの秘訣やコツなどがあれば教えてください。
ウルゴン氏:私は「クルマを痛めたくない」という部分を一番に考えてドライビングをしています。これからもそのようなドライビングには変わりないです。主にニュルブルクリンクの話ですが、1周約21キロのコースの最初から最後まで、同じフィーリングで走らせることが重要で、ドライビングに影響されてタイヤがダメになったりとかブレーキがダメになったりしたら元も子もありません。運転のソフトさなどは、経験だったりとかクルマへの理解度などもありますが「自分の中では最初から最後までクルマを痛めない」ように走ることが、今のドライビングスタイルにつながっているのだと思います。
ー今後のアルピーヌブランドでの”ハイパフォーマンスカー”は、電気自動車がベースになっていく可能性もあると思いますが、期待をしてもよいでしょうか?
開発・研究を始めてからというもの、始める前までの電気自動車のイメージとは違い、凄く面白いところがいっぱいあるなと感じています。クルマの作り方としては、今までと違う作り方を考えなければいけなくて、そんな中でもFun to Driveのクルマは作り続けます。また、技術は日々進歩していて、今までとは違うクルマの作り方ができると思います。時間はかかるかもしれないのですが、今後アルピーヌブランドで発表される可能性がある電気自動車に関しては期待してもよいと思っています。
ー20年に及ぶR.S.の系譜が一度終結するということなのですが、今までの自動車開発における日本市場の重要さはどれくらいのウェイトだったのでしょうか。
実際にメガーヌ4でいえば日本の路面を想定して開発を行なっていたこともあるので、マーケットとしては非常に重要な場所です。ただそれは、日本だけの話ではなく、大きくレンジを持つという意味でもさまざまな条件を想定・実際に走行させて開発をしているので、R.S.モデルだと「サーキットの開発が終わった際には3割、残りの7割はオープンロード」という形でクルマを作っています。今までのR.S.モデルは、長年取ってきたデータなどからの熟成があって、どんどん新しい技術を取り入れながら、チームとして妥協点も見つけながら開発をおこなっていて、その一端には「皆様の記事(試乗記)」や「ユーザーのフィードバック(エンドユーザーの試乗会など)」のフィードバックを重要視していて、そこからどんどん熟成をしていくという考え方でいます。
今後アルピーヌブランドへ変わっていくルノー・スポール。今後の同ブランドにも期待していてもらって構わないというお言葉を開発ドライバーのお2人から聞けたことは、ルノーファンにとってはとても心強いことなのではないでしょうか。また、どれくらい待てばいいの?という質問に対しては、「少なくとも2年は待ってて欲しいな(笑)」と言及をされていたこともあり、私たちをワクワクさせるクルマが登場する時はそう遠くないかも?
過去のR.S.を代表するモデルがここに!ルノー・スポール ガレージ
初代R.S.モデルなど、ルノー・スポールが過去に手がけた量産モデルを振り返るコーナーも。今回の展示では、5台のクルマが展示されていました。それも全て”オーナーカー”ということで驚き。どのおクルマも綺麗な状態を維持されていて、オーナーさんの愛着具合が伺えました。
ルノー・スピダー
ルノー・クリオV6
ルノー・メガーヌ2 R.S.
ルノー・メガーヌ3R.S. “パックリュクス”
ルノー・メガーヌ4R.S. “トロフィーR”
レーシングシミュレーターのプロが、ウルゴン・メリメに挑む!?
一般の方向けに、事前に告知されていた現地プログラムの中で、気になる文言がありました。それは…
ドライビングシミュレーター!!
しかも、ルノー・スポール開発の”要”といっても過言ではないお二人に挑戦するという内容で、この人が黙っていられない訳がありません…
そうです、ワイパーさくらです。
彼に関する記事については、以下のリンクからどうぞ!
紛れもなく、彼はe-Sportsの国内トッププレイヤーであり、我々CarBoonで連載を行なっているように”現役フォーミュラドライバー”でもあります。そんなワイパーが、ルノー・スポール開発ドライバーに挑みます。今回のコースは、このイベント会場でもある”袖ヶ浦フォレストレースウェイ”、クルマは”メガーヌ4 R.S.”です。
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結果、敗北しました…
さすが「ニュルブルクリンク最速の漢」ロラン・ウルゴン氏。ポンと乗って、計測3周目でベストラップを叩き出しました。ワイパーさくらのタイムが“1:19.448”、ロラン・ウルゴン氏は“1:18.849”と、約コンマ5のタイムさでウルゴン氏に軍配です。ちなみに、代表セイタローは“1:19:999”でした。クソ…追いつけるように頑張る…(絶対に無理)
でもこの後…?
このドヤ顔。実はイベント終了後、あまりにも悔しいワイパーさくらは、代表と3周の『泣きのアタック』をさせていただき、画像の通り“1:17.871”を叩き出しました。ウルゴン氏のアタックを見た後に、それを自分の走りに反映させる能力がズバ抜けている…彼が正真正銘のプロドライバーということを忘れていました…凄い。
国内11社の自動車系メディアがしのぎを削った「メディア対抗タイムアタック」
メディア向けのプログラムとして、ルノー・ジャポンが用意した”メガーヌR.S.ウルティム”をドライブし、スラローム競技とサーキットのタイムアタックの2種目にて競うプログラムも開催。
イベント来場者はメディアチーム11社から1位と2位を予想し、見事当たった方には景品が贈呈される「タイムアタックダービー」として、来場者も楽しめるイベントとなっていました。CarBoonは残念ながら参加できませんでしたが、今後このようなプログラムに参加できるように精進します…!
ルノー・スポールがサーキットを疾走!ルノー・スポール カップ
今回のイベントは、ルノー・スポールモデルのパフオーマンスを存分に楽しめる一般のお客様向けサーキットイベントとして、JAF公認のレーシングコースを使用した”スポーツタイプ”の走行会が併催されています。2つのグループに分けられており、サーキット走行が初めての方から、とにかく速さにこだわるエキスパートなクラスまで、自分のペースで楽しめるプログラムとして、各々が楽しんで走行していました。
また、サーキットを自分のクルマで走行した後に、ロラン・ウルゴン氏とフィリップ・メリメ氏の運転するR.S.に同乗し、2人が監修した今回だけの特別コースにて、R.S.のパフォーマンスを存分に体験できる特別プログラムも実施されました。代表の記憶の中では、今までウルゴン氏・メリメ氏が一般ユーザー向けに体験走行をすることは数少なく、最後のイベントとして相応しい特別プログラムだなと感じました。いいなぁ!!僕も体験したかった!!ちなみに、こちらは早々に募集定員に達してしまっていたようです。そりゃそうだ。
ウルゴン氏・メリメ氏は引っ張りだこ!
オーナーからしてみれば、今回のゲストであるウルゴン氏・メリメ氏は、もう雲の上の存在。そんなお二人に直接お会いできる機会はそうそうない!ということで、サインをもらったりと、思い思いの交流を楽しみました。
靴やクルマのダッシュボード、サンバイザーからエンジンルームまで!代表の僕も、取材ということを一瞬忘れ、サインをいただきました…。感激!
歴代ルノー車でパレードラン!オール・ルノー・ラン
イベントを締めくくるのは、ルノーモデル・アルピーヌモデルを対象とした先導車付きパレードランである『オール・ルノー・ラン』。全てのルノーモデルが可能ということで、R.S.モデル以外の”キャプチャー”や”カングー”など、大人しいルノーモデルも、さっきまでビュンビュン走行会をしていたコースを体験できるこということで、数多くのクルマたちが楽しみました。
R.S.の天国!最高のイベントでした
今回が最初で最後の開催となる、R.S.のファンイベント「R.S. ULTIMATE DAY」。普段街でもなかなかすれ違うことのないクルマたちが一堂に会すると、ここまで壮観なのかと驚くばかりですが、代表が凄いと思った部分は「メーカーが公式に」このイベントを行っているということ。
同じようにファンイベントを開催しているメーカーさんもありますが、実際に自分が乗っているメーカーでこのように楽しめるイベントを開催していることは、オーナーからしてみればとても嬉しいことですし、ユーザー同士が交流できる場として、メーカー側もユーザーとの距離感が近いことが、ルノーが愛される理由の一つなのではないかと感じます。
R.S.のイベントとしては最後の開催ということで少し残念ですが、”ユーザー参加型イベント”は今後も開催していくということをお聞きしたので、楽しみに待っていましょう!
(取材協力)ルノー・ジャポン株式会社
(企画・執筆・編集)セイタロー
(写真提供)藤風さん / つばっきーさん