【デザインだけじゃない】フィアット・ムルティプラのスゴイとこ

こんにちは、Canalです。

全長が長くて、車高も高くて、3列シートで、スライドドアで…というのが、一般的に「ミニバン」と聞いてイメージするものだと思いますが、今回紹介する”フィアット・ムルティプラ”は、そのイメージとは全くの別物。では、どこが別物なんでしょうか?

フィアット・ムルティプラ

今回紹介する”ムルティプラ”というクルマ。そのデザインから、醜いクルマ・変なクルマ、という位置付けがされがち。

たしかに、正直なところ、素直にカッコいいとは言いにくい見た目ではあるのは事実。良く言えば『インパクトがある』悪く言ってしまうと『奇妙』という感じで、デザインだけで一瞥されがちな”ムルティプラ”ですが、このクルマで注目してほしいポイントは、デザインではなく緻密なパッケージングですよ、パッケージング!

ムルティプラの全長は、ミニバンとしては驚くほど短い、3,995mm。(日本仕様は4,005mm)なんと4mを切るんです。Bセグメントコンパクトカーの”トヨタ・ヤリス”や”ホンダ・フィット”とほとんど変わらない全長でありながら、6人が快適に乗れるスペースと、広いトランクスペースが確保されているのです。これって凄くないですか!?

でも、普通に考えたら、6人乗りのミニバンがコンパクトカーのサイズで実現するはずがありませんよね。では、どのようにして、短い全長と広い車内を両立させたのでしょうか?

それは、1875mmという広い全幅です。一般的な国産ミニバンはもちろん、多くの輸入車ミニバンの全幅よりも広いムルティプラの全幅。この全幅を利用し、一般的な3列シートミニバンとは異なり、前3座+後3座の2列シート・6人乗りを実現したのです。

でも、どうしてそこまでして、全長を短くして、全幅を広げて6人乗りになければいけなかったのか気になりませんか?

その理由は、欧州のカーフェリーの料金にありました。実は、カーフェリーの料金が車体の全長によって区切られていたんです。もちろん全長が長いほど、料金は高くなります。そこで、ムルティプラの開発チームは、どうしても全長を4m以下にしたかったというわけですね。しかし残念ながら、後期型では4mを超えてしまいました…。(そこ、こだわっていたんじゃなかったのか!)また、日本仕様でも4mを超えてしまいます。

一般的なベンチシートの中央席には、「狭い」「シートが硬い」といったイメージが付き物ですが、ムルティプラは違います。広い全幅を活かして、6脚のシートが独立しており、全て均等な大きさになっているのです。そのため、中央席に座る人が不憫な思いをしなくて済むというわけです。さらに、全てのシートに3点式のシートベルトとヘッドレストが装備されており、乗員全員が平等に作られていることがわかりますね。広い全幅による取り回しのデメリットよりも、乗員の快適性を優先したというわけです。

でも、6人全員で移動することなんて、6人家族でもない限り、滅多にありませんよね。

そんな時は、中央席のバックレストを前に倒してみてください。倒してみると、なんとそこにはアームレストとテーブルが現れます。そこには、ドリンクホルダーと小物を置けるトレーも装備。一般的にドリンクホルダーが少ない欧州車ですが、さすがムルティプラです。ドリンクホルダーなんて、何個あっても困りませんからね。ただ、エアコン吹出口の下のドリンクホルダーは、絶対に運転席からめちゃくちゃ遠いですよね。写真だけで想像つきます…。

ちなみに”ムルティプラ”というクルマ、デザインが特徴的なのは、外だけではなく、中もなんです。

至る所が曲線でうねうねしていますよね。インパネ中央に、メーターがあったり、エアコン吹き出し口があったりと一見奇妙で使いにくそうに見えます。ですが、これが意外にも使いやすいんです。筆者はムルティプラで長距離運転をした経験があるのですが、迷うことなくすぐに操作できました。また、ダッシュボード上部には収納スペースもあり、実用性にも優れています。ここはさすが実用重視のミニバンといったところ。

このように、実用性に優れたパッケージングを持つムルティプラですが、そのデザインから、ややとっつきにくかったのも事実。この独特なデザインは2004年にマイナーチェンジされた、後期型のムルティプラで生まれ変わります。それがこちら。

後期型では、前期型が放っていた強烈なインパクトのデザインがかなり抑えられてしまったのです。というか、むしろ抑えすぎて、個性が無くなっている気も若干します。批判的な声も多かったフロントウィンドウ下のハイビームライトが消滅してしまい、ヘッドライト周りも個性的な円形のものから、ごく普通の形状に改められました。以降、生産終了まで、このデザインで販売されましたが、改められたフェイスのおかげで、販売台数が増加したかといえば、そんなこともなく、2010年に販売を終えました。

日本では大きな成功をすることは無かったムルティプラですが、同じようなコンセプトのクルマが日本から誕生しました。2004年に発売された“ホンダ・エディックス”です。エディックスは、前後の中央席がスライドできるV字シートレイアウトなどの独自の特徴がありましたが、3列シートミニバンが人気の日本では苦戦し、こちらも後継車が誕生することはなく、生産終了となりました。日本では3席2列のパッケージングはウケないんですかね…。

https://global.honda/jp/

まとめ

ムルティプラが誕生した1990年代後半の欧州では、”ルノー・セニック”や”シトロエン・クサラピカソ”などの、ミニバンが数多くラインナップされていました。そんな時代に他とは違うパッケージングで登場したムルティプラ。ここ日本では、特徴的な奇抜なデザインから、あまり受け入れられませんでした。しかしながら、この独特のデザインやパッケージングを支持する方は依然として多いのか、発売から20年以上経った現在でも、中古車市場は比較的高値安定。そのため、少しでも気になった方は、早めにチェックしてみてはいかがでしょうか!

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Editor

ルーテシア2からトゥインゴ・ゴルディーニR.S.に乗り換えた大学生。欲しいクルマが多すぎて困っています。