こんにちは、セイタローです。
皆さまは「e-Sports」というものをご存知でしょうか。ご存知でしょう。
“趣味”や”道楽”として楽しまれていたゲームというものが、今や職業として社会的に普及し、認められつつあります。
さまざまなレーシングシミュレーション出身の『バーチャルドライバー』が、リアルなレーシングドライバーに転向する例も多くあり、“夢へのルートが多様化し始めている”現在に、CarBoonではバーチャルレースからリアルレースにチャレンジする1人のドライバーに注目し、密着を行うことにしました。
過去の密着記事は、以下のリンクからご覧ください!順を追って見ていただけると「CarBoonで見ていた仲間の成長」を一緒に見届けることができます。是非!
角間 光起 (カクマ コウキ)
2002年4月28日生まれ、神奈川県出身。WRF所属。ハンドルネームは”ワイパーさくら “。
クルマ好きだった祖父の影響で、物心ついた時からクルマ好きとして育つ。2019年に開催された「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」では、神奈川県代表選手として活躍。2021年にはJeGTに出場し、その後e-Sportsチームに加入。
グランツーリスモを中心にさまざまなレースに参戦するとともに、今年からリアルレースに挑戦する。
練習走行では「セッティングの変化」を試しながら合わせていきました
ー今回の優勝につながった要因として「クルマのセッティングが決まった」と言っていたけど、どのような感じで仕上げて行ったの?
練習走行の時点で、さまざまなセッティングをやってみて、色々と変化を試しながら乗ってみていました。
その日は3枠の走行(1枠=25分)を行ったんですけど、最初の1枠目から調子がよくて、全ての枠の全体ベストも1枠目で取れて!
タイムが出たから終わり!というのではなくて、そのあともメカニックの方2人と相談しながらクルマを作っていく作業を行っていきました。
ー決勝はバチっと決まったセッティングで走れていたのかな?
決まってはいたんですけど、自分が信頼して攻められるセッティングはもう少しあるのかな…?と感じて…
ー(会話を遮って)いや!これは決勝のお話を聞くときに聞こう!(笑)練習ではさまざまな方向性を試していたってことだね。
そうです!もちろん試していくうちにあんまり良くない方向に行ってしまったこともあったのですが、基本的に自分が自信をもって走れるセットアップの大枠が決まったことが、優勝にもつながったと確信しています。
今回の練習走行では、フィーリングを確かめることを重要視していたんです、単純にアンダー傾向(曲がりづらい)にしたりオーバー傾向(曲がりすぎる)にしたりとか。
プリロード(車高調整に関連する縮み幅)1つとっても、硬くしたら”高速コーナが得意”な方向性になって、柔らかくしたら”低速コーナーのノーズの入りがいい”しというように…その中でもどっちとも攻められるうまい具合のセッティングのバランスを探っていきました。
ー当日は結構走行台数がいたみたいだね、よくアタックできたね!
何台くらいだろう…1枠に20台くらいいたんじゃないかな…めっちゃ混雑してました(笑)
翌日のレースに併催で、別のカテゴリのクルマも同じタイミングで練習をしていたり、それ以外にもシンプルに練習走行に来ている選手もいたので、全然クリアラップ(前に車両がいない周)が取れなくて、結果的に運良くアタックできた1枠目がベストラップになりました。
2枠目、3枠目はフィーリングを確認することしかできないくらいだったかな…
ーその日に出したベストラップは、過去のタイムと比べてもかなり決まってたの?
いや、今までで一番速いタイムということでもなかったけど、その日のタイヤの状態と路面のコンディションを考えたら、結構ベストに近いいいタイムではありましたね。
ーそんな中、どのタイミングで”このクルマだったらいけるかもしれない!”となったの?
1枠目の最後の方に試したセッティングが今までで一番よくて、これでニュータイヤだったら凄く化けるんじゃない!?という感触があって「勝てるクルマかもしれない!」と思っていました。
ー17日には、前日に決めていたいわゆる『これ化けるかもしれない!セッティング』のまま、予選に持ち込んだの?
いや、それが予選のときにはギャンブルに出よう!ということで、今まで試していなかったセットアップで走ってみたんです。めちゃくちゃギャンブルですよね、決まっているセッティングではないものでアタックって(笑)
ー乗れてる!ってセットを捨てて「もっと乗れる」セットを出そうとしたんだ。
ですです、さっきも話した1枠目の最後で出したセットアップは、極端にマシンの動きを抑えるセットアップでベストを出していたんですけど、感触的には「今まで使っていたセットアップ」と「1枠目最後に決まっていたセットアップ」の中間くらいな特性が欲しいなと思って、それで走れればタイムもバチっと決まるんじゃないかなという感触がありました。
なので、予選ではその中間のセットアップを目指して調整してもらいました。
それが功をそうして、今まででも最高位の3位で終えることができて、初の表彰台に向けてめちゃあがっていました(笑)
予選では自己最高位の2番手を獲得。その裏には…
ー実際予選は3番手で、前の選手がペナルティの降格があり、実質2位になったよね。その時はどんな気持ちだった?
自己最高順位で表彰台を狙うポジションだとかなり上位だから普通に嬉しかったし、なんなら優勝もワンチャンあるかな!?みたいな期待もありつつで、気分はめっちゃあがっていました
でも、僕は僕でベストタイムが抹消されているんですよ…(苦笑い)
ーえ!そうだったの!?予選終了後の裁定で順位が変わったけど、それがなかったら自力の2番手もありえたってこと?
いや、失格になったベストタイムと、採用されたセカンドベストのタイムがあんまり変わらなくて、順位は変わらなかったかな…悲しい。モータースポーツには、コースから4輪が落ちてしまうと「4輪脱輪」ということで、タイムが無効になったりペナルティがあったりするんですよね…それを取られてしまいました(汗)
なおかつ抹消されたベストタイムも全然まとめられなかったんです。後からデータロガーを見直してみると、まとめられていたら58秒代に入れられていたはずなんです。各選手のセクタータイムを比較してみると、序盤の1つ目のセクターでは全員よりコンマ1速くて、クルマのポテンシャルと自分の引き出しを活用できれば、全然優勝もあり得るんじゃないかなという感触はありました。
ー決勝でもキーになる「1つ目のセクター」なのだけど、このセットアップで余計磨きがかかったんじゃない?
そうなんです、1コーナーがばっちり決まっていて(笑)
元々得意っちゃ得意なコーナーなんだけど、このセットにしてからは、何ていうんだろう…「リズムに乗れる」というか、言葉に表せないくらいに感触がよくて、クルマと自分がばっちり重なったような感じで走れる初めての体験でした。自分がブレーキをしたいタイミングで思ったように減速して、加速をしたいタイミングでバッチリ加速していくような感覚があって、理想としているラインにうまくクルマが乗っているような感じです。
ーチーム代表の前田さんは、過去最高順位で戻ってきた角間くんをみてどんな雰囲気だった?
個人的には「おっ!やるやん!」みたいな感じで(笑)表彰台に向けていい感じだね!という風に褒めてくれました。そう褒めてくださってから、これは表彰台には乗らないとな…という風に気持ちが引き締まった感じです。
ー精神的な部分でレースの前の気持ちはどんな感じだった?角間くんってプレッシャーに強いイメージが勝手にあるんだけど…(笑)
これは意外かもしれないんですけど、緊張という緊張はしませんでしたね…そもそも今回の目標が表彰台を取るという目標で、その目標に対して2番手スタートというのは、レース前に準備が既に終わっているというか、結構楽観的に考えられるポジションだったので「このまま順位をキープすれば表彰台に乗れるし、なんなら1台に抜かれてしまっても表彰台圏内だし」というところで、そういう意味ではあんまり緊張してなかったかな。
正直そのタイミングでは”優勝”ということは全く眼中になかったというか…どうしてもやっぱり小村さんが速いので、1位からのスタートでそのままぶっちぎられるんじゃないかなという展開を想像してしまってました…。だからとりあえず、2位か3位を取ろうという気持ちでした。
過去一番の好位置からのスタート!決め手になったのは”1コーナー”
ーいざ決勝レースが始まった際の”スタンディングスタート”、過去のレースではあまり納得のいくスタートを切れていないと思うんだけど、今回はどうだった?
失敗か成功かでいうと…今回も失敗よりだったかもしれない(笑)でも開始早々の1コーナーで全てを取り返したので、結果的には成功なんですけど!クルマの蹴り出しが凄く悪くて、3位の中澤選手にインを刺されてしまうくらいに出遅れてしまったんです。
最初に中澤選手がイン側にいたのが見えたので「とりあえず2番手を守らなければメンツ保てなくない!?」という気持ちでブレーキを頑張ったんです。そこでめちゃくちゃブレーキを頑張りすぎちゃって、中澤選手を抜くどころか小村選手の横まで並んでしまって(笑)
「あ!やばい俺突っ込みすぎたか!?」と思ったら案の定突っ込みすぎて姿勢が乱れてしまって。そこから立て直すためにハンドルをガッ!と切ったら、弱オーバーステアの状態から4輪ドリフトみたいな感じになっていました。でも案外それが功を奏したのか、パキッといい感じに向きが変わって「これ立ち上がり頑張れば並べるんじゃない!?」と思ってアクセルをバコっと気合で踏んだらうまい具合に加速していきました。
でもこれ、ギリギリまで「カウンターを当ててクルマの姿勢を制御してスピンを避ける」か「アクセルをガバッと踏んで加速に賭けるか」の2択で迷ったんです。一瞬のことなんですけど!でも「ここで引くくらいだったらアクセルを踏み抜いてやろう、踏み抜いてスピンしてしまったらそれはそれだ」と思っていました。その後並んだ状態で2台とも立ち上がったんですけど、その”気合アクセル”のおかげで小村選手よりも加速が速くて、S字を抜けてヘアピンで完全に前に出ました。
その時は「あれ??今俺1位だ…」って思いました(笑)
ー楽観的過ぎない!?「よっしゃやったぞ!」とかじゃないんだ(笑)
そうです(笑)自分でも「前にクルマがいない…?あれ??」って感じで(笑)
ーでもやっぱり、1コーナーで並べたのは事前のセットアップ変更が効いていたってことだよね!
そうですそうです。やっぱり1コーナーがめちゃくちゃ速いっていうのが効いていて、クルマのキャパ的にも突っ込んでいけて自分でも「今のクルマのコンディションで100%に近いポテンシャル」が生きたんだと思います。
ー抜いた瞬間は「あれ??」って思ったと言っていたけど、抜いた後ちょっと冷静になった時にはどういう心境だったの?
普通にテンションが上がっていました(笑)でもそれと同時に、後ろを走る小村選手が絶対にどこかで仕掛けてくるだろうなという心配がすごかったです。絶対に上手いし、タイミングを見計らって詰めてくるのは予想がついたので、これは絶対にミスできないな…と思いました。若干後ろからプレッシャーを感じていました。
ーでも、”レース中に前に誰もいない”という初めての状況で、1周目のバックストレートに差し掛かった時にはどんなことを感じていた?初心者目線だと、バックストレートは真っ直ぐだけに思えるから、結構いろいろと考える余裕があるのかなと感じるんだけど…
逆にバックストレートが一番怖かったです。結局、筑波サーキットの仕掛けどころって「最終コーナー」と「1コーナー」で、2ヘアの立ち上がりから速度を乗せて、バックストレートから最終コーナー、そして1コーナーまでに間にスリップストリームを使ってパッシングしていくので、パックストレートの車間がバトルのキモになってくるんです。だから全然気が抜けない。
1周目とかも若干内側を走って、気持ちイン側を牽制して走っているイメージでした。得意のセクターが相手と全然違う上に、自分のドライビングスタイルと最終コーナー手前の走らせ方があんまり合わないかなと思っているので、やっぱりその分バックストレートには気を使っていました。
ー周回を重ねていくにつれて、段々と後続の選手との差が広がっていっていたけど、角間くん的に気持ち的にどうだった?ミラーから小さくなっていくマシンを見てみて…
気持ち的にはノリノリでした!でも多分、僕よりもピットにいた皆さんの方がノリノリだったと思う(笑)
両手を上げてめっちゃ応援してくれてて!ピットから飛んでいるのが見えました。他のピットがだいたいサインボードを持って、真剣にレースを見ているからか棒立ちのような感じなのに、うちのピットだけすっごい騒がしいというか(笑)
「めっちゃ盛り上がってんじゃん!」って僕のテンションもあがっていきました。今日は俺の日なのか…?とも思って(笑)
ー最終的には2番手に6秒の大差を付けてゴールをしたけど、振られているフラッグを見てどうだった?トップでフィニッシュしたという実感は?
「本当にこれでもう終わりなの!?」と思いました(笑)変にテンションが上がっていたのもあったけど、18周ってこんなに短かったっけ?という感覚があって、ポストで振っているチェッカーフラッグを見逃してしまって、ちょっと変なタイミングでガッツポーズをしてしまいました(苦笑)
ーゴールした瞬間、代表の前田さんが飛んでいたよね!(笑)
それ、コースからも見えていました(笑)
チェッカーを受けてマシンを車検場に持っていき、クルマから降りたタイミングで前田さんが駆け寄ってくれて、その時に「本当に勝ったんだな自分」って思いましたね。勝って嬉しい気持ち半分、これ夢じゃないよね?という半信半疑の気持ち半分という気の持ちようでした。
これ、レース後の裏話なんですけど、入賞マシンはチェッカーを受けてすぐに車検場に持っていかないといけないのですが、トップだと先陣を切って車検場まで持っていかないといけないんですけど、それ自体初めての経験だったので、入り方をめちゃくちゃ間違えて、皆さんを混乱させてしまいました…ごめんなさい!!(笑)
ーELEVレーシングドリームにとって初めての優勝を勝ち取ったドライバーということで、代表の前田さんもかなり嬉しかったんじゃないかな。
今までのELEVの活動を見ていて、凄くいろいろな面で苦労されているのは感じていました。そんな中でもオーディションで僕にチャンスを作ってくださって走らせていただいている上での恩返しは「勝つこと」だと思っていて、今回ひとまず1勝をあげられたことは本当に嬉しかったし良かったと思います。
ー次のレースは10/28だね!これが今シーズンの最終戦になる上に、前戦の優勝ドライバーとして参加することになると思うんだけど、それに対しての意気込みがあればお願いします!
今回初めて勝てて、もちろん嬉しいし凄くよろこんでいるんだけど、これがゴールな訳ではありません。まだ最終戦も残っていることですし、今のチームだったら次も勝てるという自信が付きました。次もこの調子で勝ちに貪欲にレースをしていきたいと思っています!
今回のレースは、CarBoon代表のセイタローくんも含めて、皆さんのスケジュールがあんまり合わない中だった(笑)ので、次戦最終戦はたくさんの人に現地で見てもらえたらな…と思っています!(笑)
変わらずの応援、よろしくお願いいたします!
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